取材 / 文 福田紗貴
写真 深井雅夫
Dig355をお読みのみなさま、こんにちは。
Dig355は、音楽のかっこよさ、おもしろさをもっと多くの方に伝えたいと日々アンテナを張り巡らせ、奔走しています。そんなサイトの幕開けを飾るのは、格好良さと可愛さと、独特のおもしろさで最近注目の若手バンド、MOSHIMO。
MOSHIMOの「もしも」には、ただの妄想に留まらない「もしも」の話がありました。
MOSHIMOは今話題のバンドです。
ルックスはキュートで曲はキャッチ-、歌詞は独特の音遊びセンスと言葉のチョイスで耳に残り、奏でる音は本格派。CHEESECAKE時代からのファンだという方も数多く、LINEライブやイベント出演など、各所で活躍しています。
女性のリアルな心情を独特の言葉で描く歌詞世界、吸引力抜群の純真可憐な歌声、中毒性のある卓越したメロディーセンスで若者に人気の新世代ギターロックバンド。元CHEESE CAKEのVo&Gt:岩淵紗貴、Gt:一瀬貴之に、Ba:宮原颯、Dr:本多響平が加わり、2015年4月に福岡にて結成。2016年5月にデビューシングル「猫かぶる」、同年9月に1st mini album「命短し恋せよ乙女」をリリース。第一興商が今注目のアーティストを強力PUSHする「D-PUSH!」、さらには全国5大都市のステーションが選ぶネクスト・ブレイク・アーティスト「JFL presents FOR THE NEXT」に選出。若者のSNSを中心に日々拡散し、youtubeにて150万再生を突破する。2017年に入ると、日本テレビ系「バズリズム」の音楽関係者が選ぶネクスト・ブレイク・アーティスト「これはバズるぞ2017」を始め、GEOネクストブレイク2017、FM802「ROCK KIDS –YUME GO AROUND- Eggs The Future in Our Hands Coming Up 2017」など、各所でネクスト・ブレイク・アーティストに選出。 2017年5月10日に2nd mini album「触らぬキミに祟りなし」をリリース。これがタワーレコードのPUSHアイテム「タワレコメン」に選出される。現在4大都市ワンマンツアー2017夏「今宵もキミにこころあり」を開催中。
彼らのオフィシャルサイトではバンドの名前「MOSHIMO」と掛けて、各々の妄想を紹介してくれているのですが、これを読むとますます、メンバーの皆さんに会ってみたくなりました。
…ということで、行ってまいりました、MOSHIMOのスタジオ兼リーダーのお家。
MOSHIMOは活動がしやすいようにみんな比較的近くに住んでいるそう。一瀬さんがマンションの一室を改造して作ったオシャレなスタジオに、毎日のように通って曲を作っているとのこと。
(※取材当日はミニアルバム発売日前日。MOSHIMOの皆さん、マネージャーさん、お忙しいところ本当にありがとうございました)
日頃はどのように練習してらっしゃるのですか?と聞いたところ、早速いつものリハのように、楽曲を演奏してくれました。生音MOSHIMOはコーラスがとても綺麗で、鳥肌が立ってしまいました…!
素敵な演奏で迎えて頂いたところで、改めてインタビューの開始です。
ー MOSHIMOさん、今日はどうぞよろしくお願いします。
一同:よろしくお願いします!(ペコリ)
MOSHIMOのみんなは、メンバーで話すときは九州弁。会話のテンポがとてもよくて、仲の良さが伺えます。そして九州弁のまろやかな語尾がMOSHIMOの雰囲気にとっても合うのです。
ー そもそもなんですが、MOSHIMOって変わったバンド名ですよね。どうして「もしも」にしようと思ったんですか?
Vo&Gt 岩淵紗貴(以下 岩淵):「もしも」っていろんな使い方が出来るじゃないですか。「もしも」って想像すること自体、良いようにも、悪いようにも自分の勝手でできることで。そしてそれをまた壊すこともできる。創造性があっていい言葉だなと思っていたので、もしもっていう名前にしました。普段そんな真面目なことばかり考えていないんですけどね。(笑)
Gt 一瀬貴之(以下 一瀬):例えばライブタイトルとかにも「もしも」って使えるんですよね。今年の初めには「もしも僕らが学園祭をやったなら」っていうタイトルで、学生限定のワンマンライブを開催しました。普段中高生の人たちって中々ライブハウスには来れないと思ので、そういう方たちに特に楽しんでもらえたらいいなと思って。
ー なるほど!確かにツアータイトルとか曲名とか、用途広く使えそうですね!
ちなみにMOSHIMOのホームページ内でポチちゃんが恐竜に食べられたいって書いてたと思うんですが、あれはどういう意味なんでしょう?
岩淵:「もしも一生を終えるとしたら」、って考えると、私はT-レックスに食べられて終えたいんですよね。
ー …そこを詳しくお願いします
岩淵:笑。どうせ死ぬなら、誰かのためになったらいいなと思うし、自然の摂理に抗いたくないから。T-レックスは肉食恐竜の中でも最大級で怖いですけど、生態の全てが分かっているわけじゃないから人の想像で創られているところもある。それも含めて格好良くて、好きなんです。だからどうせ死ぬなら、好きなT-レックスに食べられて、その一部になりたいな、と。
ー なるほど…。そういう所を考えてのあの一文だったのですね。
不思議ちゃんって一瞬思ってすみません。いい意味で予想外の回答でした…
一瀬:僕の妄想は、例えばあのきれいな人とどうにかなんとかなったらどうだろうな、とか…
ー 一瀬さん、まさかのしっかり者のリーダーが逆にそういう事言っちゃいますか!
一瀬:あはは(爽やか)。だから種類が豊富な岩淵の妄想は、面白くて、つい聞いちゃいますね。ちゃんと話を聞いてないと怒られるってこともあるから聞いているってところもあるけど。(笑)
歌詞にもそんな妄想がものすごく反映されているからか、岩淵の歌詞には、誰もがグッとくるポイントが絶対に一つはある気がしますし。
Ba 宮原颯(以下 宮原):うん、あるよね、"グッ"ポイント。 僕は今回リリースするアルバムの中では「花束」っていう曲のAメロがすごく好きなんです。そのフレーズを最初に聴いた時に、やられたなーって思ったんですよ。
愛のない花束を抱えて/大事そうに守ったプライド/差しのべられたその手を拒んで/胸を張って生きていくのかい?(花束)
…岩淵の歌って、聴いた時にハッとする曲が多いと思う。自分の中にもこういうところあるなって気付かされるというか。入りの部分で人を惹きつける曲が多くて、彼女が妄想で書いた曲を自分で解釈すると楽しくなってくるんですよね。例えば「途切れないように」って曲の冒頭とか。
ー 「二足歩行の僕らは/やけに頭が良いから/余計なことも考えやすい/真面目な生き物だ」という歌詞のところですね。あそこは私も、"グッ"ときました。
一瀬:岩淵って、普通の人だったらあまり考えずに流しちゃうところも結構考えるというか。別の視点で立ち止まって考えるタイプなので、そういうところで曲の深みが生まれてくるのかな、って思いますね。例えば、「やけに頭がいいから」っていうのは褒めているようでいて、すごい皮肉ですし。単純に一言でいうと、"人間は考えすぎる"ってことを彼女は二行で表現する。その表現はやっぱり、彼女でないとでないものだと思います。
Dr. 本多響平(以下 本多):僕も「途切れないように」、好きです。
宮原:響平は他の曲でもすっごい楽しそうにドラム叩くけど、この曲の時は特に乗ってるもんね。
本多:うん。洋楽ロックが好きなのであまり歌詞に重きを置いて聴いてない事もあるけど、この「途切れないように」のラストサビはスッと耳に入ってきて、"グッ"ときた。歌詞の世界を想像した時に、すごい胸が痛くなっちゃったんです。
生きてると人間関係とか嫌になっちゃうことってあると思うんですよ。この曲の主人公はそんな時、家族か恋人か、誰か大切な人に会いにいったか、一人旅に出ようとしたか…それは分からないですけど、自分の助けを求めてチケットをとったんですよね。でも結局理性が勝っちゃって、また日常に溶け込んでいった。こじれた社会に戻って行ってしまった。
…その、自分の感受性と理性のはざまで戦ってる主人公の葛藤が理解できちゃって、心に響きました。
ー なるほど。ストレートな言葉が響く時もあるけど、感情の機微は一言ですまないこともありますよね。どういう時にあの言葉が生まれたんでしょう…?
岩淵:単純に、あの曲はバンドのこととか、これからどうやって進んでいったらいいのかな、とか、いろいろ考えてた時に作ったんですよ。音楽って楽しいものなのに、何をそんなに悩んでるんだろうって思ってたんです。でも、悩まない人に良い言葉は見つからないよな、とも考えていて…。
人って感情があるし、言葉の意図を汲み取ろうとするから楽しいものでもあるんですけど、逆にすごい面倒な生き物でもある。想いを伝えることも出来るし、空気を読むことも出来る。変に相手の顔色をうかがって何もできなくなったり、言えなくなったりすることもある。それっていじめの問題にも通じるところがあると思うんです。そういう、人間ならではの、 いわゆる"面倒くさい"ことを考えてた時にできた曲ですね。
一瀬:「途切れないように」は今回の作品で初めて出てきた世界観だと思ってます。今までは少年ぽかったり、学生というか…青春に近い様な、いわゆる"若い"世界観だったように思うんですけど、この曲は割と大人というか。社会との協調性だったり、現実とのはざまみたいな、そんな世界が出てきたのも新しい境地かなと思っています。
岩淵:よく"ザコく"(=ざこっぽく)みられるんで!!今回はそういう曲も入れてみました。
ー ざこく?!?! ちょっと最近耳にしない言葉ですけども…
岩淵:(笑)ちょっと子供っぽくみられることが多い気がして、そうじゃない!っていうのを出したくて。いや、これはたぶんみんなが思ってるとかじゃなくて、きっと私が勝手にコンプレックスを抱いてるだけだと思うんですけど。
一瀬:確かに、結構そういう風に思われてるところもきっとあるよね。女の子一人フロントで、後ろ男三人でやってると、「和気あいあいとポップス楽しくやってまーす、みんなを笑顔に、がテーマでーす!」みたいに見られたりすることがある。でも、そういうバンドじゃない!って彼女は思ってて。すごくロックハートを持ってるし、歌詞も本気で届けたいと思ってるし…
ー ロックハート!カッコいい!笑
岩淵:いや、思ってない思ってない!そこまで持ってないよ!照
三人:急に恥ずかしくなってる!!!笑
岩淵:いや、そうは思ってないけど…、一瞬しか聴いてなくて、パッと聴きで「あーこんな感じのやつや」って言われると、ふっざけんな!!!って思う。
ー その気持ちは分かりますねー。ちゃんと知る前から全てをジャッジされるとやっぱり悲しいですもんね。でも一回耳にしたら忘れられない独特のキャッチ-さとか、深みのある言葉のセンスがMOSHIMOにはあると思うのでその心配はない気がしますが…
一瀬:ありがとうございます。曲は日常でフッと湧いてくるものから作るタイプなんですけど、メロディーと歌詞のはまりは特に大事にしてますね。
岩淵:特に最初に出来たフックの部分から歌詞の世界を広げていくので、フックのポイントを好きだって言って貰えると、なんか伝わった気がして嬉しいです。
自分が曲を作るときも、何気なく生活をしている時に思い浮かんだフレーズを曲にすることが多いので、聴いてくれる人にとっても「生活に溶け込む」曲になったら良いなって思います。私の中でスピッツの曲がそうなんですけど、例えば、嬉しい時や悲しい時に自分の中で流れる曲、みたいな。喜怒哀楽の中にも細かい種類の感情があるから、そういう人間らしい感情をしっかり書けるバンドになりたいって思ってます。
ー なるほど…。 岩淵さんの、"一言で済むところを2行に分けて書く"細やかさがいろんな人の感情に入っていきやすいのかもしれませんね。
岩淵:まぁこういう威勢が良いのも調子が良い時だけで、根はネガティブやし、普段はほんと気持ちの振れ幅ひどくて自分で疲れるくらいなんですよね…。暗黒の四年間もあったし。
一瀬:そういう時期、あったよね。とにかく人のことを気にしているというか。
岩淵:うん。人とコミュニケーションとるのがすごい苦手な時期があった。一時期、自分の感情が分かられるのが嫌で、閉ざしてました。ずっとマスクしてたんです。私の気持ちではないことが勝手に、私の気持ちとして伝わっちゃったことがあって、それがトラウマになってしまって。混沌とした四年間だった…!苦しかったですね。鬱屈とした思いのはけ口は曲だけ、って感じでした。言いたいことをばれないように書くのが世の中への仕返し、みたいに考えてたから曲の説明とかも好きじゃなくて。説明したら、自分が思ってた事を知られると考えると怖くて、インタビューも受けられなかった。
ー 岩淵さんの笑顔はとっても明るいから、そんなことがあったなんて思ってもいなかったです。大変な思いをされたんですね…!打破する切っ掛けって何かあったんですか?
岩淵:切っ掛けはKREVAさんのライブなんです。CHEESECAKEのデビュー前に、KREVAさんのことが好きな友人と広島に旅行に行ったんですけど、その時偶然ライブをしてらして。その時は、バンドしか聴かない!バンドこそ生きざまだー!みたいに思ってた時だったんですけど、その友人に誘われてライブに行ってみたら、良い意味でいろんな考えが覆った。
そもそも私の中でラップってディスるイメージが強くて、あんまり良い印象なかったんですよね。申し訳ないんですけど。ネガティブなことはいちいち言わなくて良いじゃない、って思ってたから。でもいざライブでKREVAさんの曲を聴いてみたら、その印象とは違ってた。 "自分のネガティブなところ、嫌なところを全部さらけ出してて、そんなお前らで良いから俺に付いてこい!"みたいな曲で、すごくパワフルで。今までの自分が恥ずかしくなっちゃうくらいでした。私何やってたんだろう、大事なのはハートだ!音楽はジャンル関係ないし、音に乗せて伝えることが大事なんだ!みたいな発見があった。これからCHEESECAKEとして、こういう人たちと同じ世界でやっていかないといけないのに、なんて偏見まみれのダメ人間なんだ…!って思ったら、マスクが取れるようになりました。笑
意外な過去を話してくれた岩淵さん。
MOSHIMOのインタビューは後編へ続きます。
後編:7月9日(日)22時UP予定!!お楽しみに!!
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